「なにかと話題の旧三菱合資会社唐津支店 ~その歴史からアニメの舞台裏まで~」講演会レポート

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2019年3月2日(土)佐賀県唐津市の唐津市高齢者ふれあい会館りふれ にて開催された、「なにかと話題の旧三菱合資会社唐津支店 ~その歴史からアニメの舞台裏まで~」講演会(主催:まちはミュージアムの会)に参加してきました。
せっかくなので講演の内容をまとめてみましたが、間違ってたり抜けている部分もあるかもしれないのでご了承ください。

佐賀県を舞台にした大人気アニメ『ゾンビランドサガ』の制作秘話が聞ける機会ということもあり、多くの参加者が詰めかけました。

第1部:旧三菱合資会社唐津支店 その生い立ち

講師:中村 享一 氏(建築家)
三菱端島坑(軍艦島)の研究をはじめ、各地の歴史的建築物の保存・修復に携わる。

軍艦島研究の成果から分かった、旧三菱合資会社唐津支店の建てられた時代の技術や、携わった人物の関わりについてお話をしていただきました。

軍艦島研究について

軍艦島の研究は1991年に開始。
日本初の鉄筋コンクリート(RC)造アパートとなった「30号棟」の3DCGを作成した。
この3DCG作成作業は考古学者でいうところの発掘調査であり、楽しくなってきたのもあるし、正しいデータを作って次の時代へ活かしていかなければならないという使命感もあるそう。

世界に先駆けた建築技術

7階建ての「30号棟」は100戸超の居室それぞれに炊事設備(当時はかまど)があり、ダクトを通じて屋上より排煙される設備を備えていた。これは西洋建築の単なる真似では実現し得ないものであった。
さらに、基礎・骨組はRC造だがその中に木造を組み込むという構造も見られたそう。

また、当初4階建ての計画から最終的に7階建てになったのは、周囲の古い建物を解体し、広場や店舗を整備して「働きたい街」を目指したからなのかもしれない。

1920~30年代には世界的にも機能美を追及した建築をする流れになっていくのですが、軍艦島では1900年代初頭から既に実践していたことであり、世界に先駆けた建築技術が投入されていたことが分かるのだそう。

旧三菱合資会社唐津支店について

同時期、唐津の炭鉱も大きな利益を上げており、1914年にはパナマ運河の開通も控えていた。
そんな中、三菱合資会社唐津支店の建設に大きく影響を及ぼした2人の人物が曽禰達蔵と保岡勝也であった。

曽禰達蔵は唐津出身の建築家。
イギリス人建築家・コンドルとの共同設計も行った。
マネジメント的な役割が得意で、若い建築家の養成にもあたった。

保岡勝也は辰野金吾や曽禰達蔵の下で設計を学んだ。
三菱合資会社唐津支店の設計を実際に行ったのはこの人物。
実際の図面を引くのが得意で、工芸分野への造詣もあり和洋折衷のデザインもできたのだとか。
川越、若松、唐津、熊本を中心に作品が現存しており、これから評価されていくであろう建築家だそうです。

質疑応答

Q. 30号棟の3DCGデータはどこで見れる?
軍艦島デジタルミュージアム(長崎市松が枝町)で公開中。
3DCGデータ活用方法のコンペ開催を検討中。

Q. 既に技術が確立していたのに、旧三菱合資会社唐津支店がRC造でなく木造の理由は?
端島の建築物は台風の影響を大きく受ける過酷な環境にあるため、RC造が採用された。
唐津支店の場所はそこまで過酷な環境ではなく、木造で十分と判断されたのではないか。

Q. 端島の建築物の復元は可能なのか?
基本的に当時の状態の復元を基本とし、見えない部分の補強を行う。
しかし、30号棟に関してはスラブが崩壊寸前という状況であり、さらに当時使用していた海外製の鉄筋が現在では入手不能。
レプリカ建築であれば現代の建築基準法の範囲内で技術的には可能だが、いずれにしても、費用面の理由で非常に難しいのではないか。
(税金を投入するとなれば、市民の理解も必要。)

第2部:アニメ・ゾンビランドサガ その生い立ちと制作秘話

講師:竹中 信広 氏(株式会社Cygames アニメ事業部)
佐賀県を舞台にしたオリジナルTVアニメ『ゾンビランドサガ』(2018年秋放送)のプロデューサー。

『ゾンビランドサガ』作品紹介

ゾンビがアイドルになって佐賀県を救う!?!?

『ゾンビランドサガ』の生い立ち

作品の原点となる『アイドルゾンビ』企画が生まれ、『ゾンビランドサガ』として放送されるまでの流れを年表で振り返りました。

2012年
MAPPA(アニメーション制作会社)大塚氏と出会い、『神撃のバハムート』(2014年~2015年放送)を制作。
その後、『神撃のバハムート』のキャラクターから着想を得て、仮題『アイドルゾンビ』として企画がスタート。

2015年
監督の境氏が合流し、『アイドルゾンビ』のプロットを作る。
幸太郎、サキ、ゆうぎり、たえ のキャラクターと、ユニット名「フランシュシュ」が決まった。

2016年
キャラクターデザインの深川氏が合流し、等身の調整をした。
この頃、企画がなかなか通らずにいたが、『アイドルゾンビ』+佐賀とすることでOKが出た。(Cygames社長が佐賀県伊万里市出身)
この年には最初のロケハンも敢行し、宮野真守さんへ巽幸太郎役を依頼。

2018年
1月、たえ以外のキャラクターのオーディションを実施。
5月には鹿島ガタリンピックに参加したが、各キャラクターについての情報はまだキャストにすら開示されておらず、訳の分からないままガタリンピックに連れて来られていたのだとか。
7月に佐賀県内を中心に撮影し、キックオフムービーを制作。最初にアメリカで公開したが、あまり拡散されなかったのだとか…。

FALSE DANCE=偽りの踊り=メイクでゾンビを隠してアイドル活動
FLESH AND BLOOD=新鮮な血肉=ドライブイン鳥の新鮮地鶏
SAVE THE WORLD=世界(=佐賀)を救う
なので、嘘は言ってないそうです(笑)

講演会ではキャラクターデザインの原案資料が披露されました。

旧三菱合資会社唐津支店との出会い

旧三菱合資会社唐津支店(唐津市歴史民俗資料館)

『アイドルゾンビ』からの経緯はアニメ雑誌やWebメディア等でも取り上げられていますが、ここからは”聖地”である唐津や佐賀を中心としたお話をしていただきました。

作中でゾンビたちが暮らす洋館として頻繁に登場する、旧三菱合資会社唐津支店(唐津市歴史民俗資料館)。
2016年のロケハンでは、
・旧三菱合資会社唐津支店(唐津市歴史民俗資料館)
・旧唐津銀行
・旧古賀銀行(佐賀市)
の3ヶ所が候補として挙がっていた。

この中から、 旧三菱合資会社唐津支店(唐津市歴史民俗資料館)を選んだ理由としては、「地元では”存在してるのが当たり前”なのかもしれないが、市街地から外れた住宅街の中に洋館が建っている様子に感じた異様な雰囲気がゾンビの住処としてのイメージに合っており、「ここでいいんじゃない?」と決まった」のだそう。

アニメ放送終了後も多くのファンが”聖地巡礼”で訪れるスポットとなっているが、「迷惑がかかる可能性もあり、実在の建物をそのまま使うことに懸念はあった(遊具の件もありましたし…)」とのこと。
聖地巡礼の際はマナーを忘れずに。

作画資料

講演会のテーマである旧三菱合資会社唐津支店の建物をモデルにした洋館を中心に、作画資料が披露されました。

  • 建物は3Dモデリングし、「庭は手入れされていない」という設定で木々の鬱蒼とした感じや、海沿いの背景を追加した。
  • 建物内部の間取りとして居間の他に、食堂、キッチン、幸太郎の部屋、メイク部屋等も設定したがアニメには未登場。2階には設定の無いスペースもあり、今後必要があれば設定を追加したい。
  • 2階から3階(屋根裏部屋)に通じる螺旋階段を追加し、屋根裏部屋を3部屋設定した。
  • 玄関は名前を貼った下駄箱が学校みたいで気に入った。(アイドルスクール的な?)
  • ゾンビ感のある場所が欲しかったので、地下室を追加。地下室への階段は、実在する階段の下に追加。
  • 天井の装飾は忠実に再現している。
  • ゾンビたちの寝室は2階。洋館なのに布団で寝るのは、修学旅行のイメージ。
  • 渡り廊下で繋がるレッスン室は近隣への配慮から防音室になっている設定。
  • 民俗資料館前の公園の雰囲気も気に入っていて、遊具にも乗ってみた。(破損してしまい、現在は撤去済み)

佐賀に馳せる思い

特に思い入れもなかったが、ロケハンで来てみると良いところだと思ったそう。
しかし、地元の人に佐賀の良いところを聞いてみても、「無い」と言う…。ずっとその場所にあったものを、どう切り取るかで多くの人に興味を持ってもらえ、足を運んでもらえる。
皆が良さに気付いて、佐賀は良いところだと言っていけば良い。

また、30分×12話では収まらずもっと様々な場所やイベントを描きたいし、フランシュシュが佐賀県観光PR大使に任命されたこともあり、責任感も感じているとのことでした。

アニメ第2期制作があるのかも含め、今後の展開に期待したいですね。

質疑応答

今回の講演会の参加者には『ゾンビランドサガ』ファンも多く、たくさんの質問が出てきました。

Q. 唐津には唐津市民会館もあるが、ライブ会場としてアルピノを選んだ理由は?
ホールの規模(スタンディングで500人程度)が合っていたし、ちょっと廃れた雰囲気があり、そんな場所に大勢の人が集まるという演出をやりたかった。

Q. 作中の洋館には、実際の歴史民俗資料館に存在しない照明などがあるが、どこを参考にしたのか?
美術監督に雰囲気を提示して作ってもらったので、私では分からない。

Q. 佐賀県東部は登場しないが、ロケハンでのエピソードはあるか?
福岡寄りの東部はあまり意識していなかった。
吉野ケ里遺跡は有名なので、あまり知られていない場所を使いたく、偶然それが西部に固まっていた。
旧唐津銀行周辺の唐津市街地もロケハンをしたので出せればよかったし、個人的には巨石パークを出したかった(笑)

Q. ゾンビランドサガの企画で一番好きだったものは? 今後やりたい企画は?
全部の企画に思い入れがあり、これが一番、とは言えない。
とは言え、吉野さん(警察官A役・吉野裕行さんの応援動画)があってこそだと思う(笑)

今後やってみたい企画ですが、しっかり準備をして実行しているというよりは、面白そうだからやってみようかと動いている。

Q. 佐賀県でのイベントはどのくらいの規模までやる?
作品のテーマが「佐賀を救う」なので、最終的な目標としてはフランシュシュのライブで鳥栖スタジアムを埋めてみたい。

Q. 制作陣は”ゾンビランドサガロス”になっていないのか?
ライブ(3月17日の「ゾンビランドサガLIVE ~フランシュシュみんなでおらぼう!~」)の準備等で仕事は続いているし、今日は唐津で講演もできたのでなっていない。
逆に、皆さんを”ゾンビランドサガロス”にさせてしまっていたらごめんなさい。
※〇〇〇(作品名)ロス…毎週放送を楽しみにしていた作品が終了することにより喪失感を感じる状態。

Q. いろは島もロケハンして
じゃあ明日行きます(笑)

Q. 制作陣は作品のヒットを予想していたか?
当初は企画がなかなか通らず、人々の反応も読めなかったが、制作関係者は皆良い作品だと言い続けられたので、「刺さる層には刺さる」と思っていた。
放送後、ここまで多くの人々に受け入れられるとは思っていなかった。
先行上映会でも笑いは起こらず、やってしまった…と思ったが、一拍おいて面白いと反応してもらえたので良かった。
(振り返ってみると)皆反応に困っていたのではないかと思う。

Q. 同じタッグで制作した『ユーリ!!! on ICE』には関わっていたのか?
「ユーリ」では監督&原作サイドで既に唐津が舞台と決まっており、佐賀という理由で出資した。
制作に直接関わってはいないが、プロモーションで協力した。

Q. 主人公・源さくら の自宅のモデルはどこ?
車にはねられるシーンなので、新規に作成した。
(聖地が実在するわけではない)